Penang Eco100 レポート(3)
元気です。
50km地点から、また山道に入っていく。
足が重くなっているのでかなりゆっくりめに走る。だんだんとトレイルになってきて、ライトで反射板を照らしながら走る。山道からフェンスに出て、フェンス沿いに少し丘を登る。かなり草が深い。長いタイツにしてよかった。でもソックスは短いので、ちょうどくるぶしのところが肌が露出している。これはしゃーない。
フェンスの穴が空いている所まで降りたらジープが止まっていて、車のライトで道を照らしていた。その先はずっとアスファルト。人口の湖の脇をずっととことこ走る。10min/kmくらい。メインライトの調子が悪いので、ちょこちょこスイッチをいじっていたら、ライトがつかなくなってしまう。これはやばい。立ち止まって直そうとしていると後ろのマレーシア人女性ランナーが声をかけてくれる。「大丈夫?ライトのトラブル?一緒に行きましょう」優しいなー。しかしサブライトは力が弱く、全然足元を照らせない。
「大丈夫だけど、暗いっすー。一緒に行っていい?」「良いわよ」
女性は今回二度目のペナンエコのチャレンジ。前回は50kに出たので、今回は100kに初挑戦なのだそうだ。
一緒にアスファルトの道をとことこ走る。しかし足元が見にくい。石ころと枝と道路の汚れの違いがわからない。これ、大変な事になったなー。と思いながら歩く。時間は12時近くなっていた。もうスタートして10時間が経とうとしてる。
山道に入る。
声をかけてくれた女性ランナーが後ろについてくれて一緒に登る。なかなかしんどいが登れないこともない。サブライトを額につけて登る。しかし、この山道、ぜんぜん整備されていない。日本の登山道やキナバル山の登山道とは全然違う。多少道にはなっているけど、道は基本木が邪魔をしていて、ドロドロウェット。障害物をうまく避けないとうまく登っていけない感じ。ペースも一気に落ちる。足元を注意してみていると道を示す反射板がわからないし、前ばかり見るとすぐにつまずいてしまう。
一歩一歩登るしか無い、と決めてゆっくり登っていく。途中うしろから来たランナーに抜かれる。仕方ない。こっちは暗くて見えないんだ。
40分くらい登って、おそらく頂上にきて、下りに切り返す。この下り、めちゃめちゃきつかった。
登りよりも下りの方がライトで照らす先が遠くなるし目からの単純な距離も遠くなるので、とにかく足元、一歩踏み出す先が見えないのである。これから踏み出す先に何があるのかがわからないまま山道を下山するため一歩下ろすのは恐怖である。
ストックを持ってきていたのが役に立った。ストックで足の先に両ストックを突き、一歩づつ足を下ろす。まるで老人の階段介護だ。それでも足元は障害物だらけで、ウエット。滑りまくるのである。
そしてどんどん抜かれる。それは仕方ない。もう順位は考えないことに決めた。ヘッドライトの明かりが足りないときに後ろから強い光で照らされると、前が自分の影で何も見えなくなってしまう。後ろにランナーが近づいて来たら本当に何も見えなくなるので、立ち止まらざるを得ない。
ここの下りで、一緒に登っていた女性にも先に行ってもらう。ランナーは結構ぴょんぴょん超えていくのに、僕はつまづきながらしか進めない。悔しいというかやぶれかぶれって感じだった。
本当に一歩一歩降りながら次のエイドを目指す。次のエイドでライトを借りれなきゃ、このレース絶望だな、とか考え出す。というか、そもそもエイドで棄権させられるのじゃないか??こんなライト一つで行くのはそれなりに危ない。ここでライトのせいで棄権になったらシャレにならんなーなど思いながら降りる。
1時間くらい降りて、ようやくCP6。時間は1時を回っていた。
エイドについて、フラフラしながらライトを借りれないか聞く。「何だ、ライトの電池か?」新しい電池を持ってきてくれる。
「いや違うんだ、ライトはぶっ壊れた。この小さいのしかないから明るいのがほしいんや」
「ライトはない。反射板も見えないんか?」
「いや、見える。でも足元はほぼ見えない。特に下り。」
「そりゃ、危ないよなぁ、、、」
共感をしてくれるも、止める様子はないスタッフ。一応棄権する必要はなさそうだ。
パンをかじってスイカを食べる。スポーツドリンクをガブガブ飲む。
もう、疲れて眠くて仕方ないので、路上に大の字になって寝る。ちなみにこの辺の写真は本当にない。
20分くらいして、寒くて起きる。ガタガタ震えてくる。汗で体が冷えたのだ。どうにもならない。もう行くしかない。
水を満タンにしてペットボトルにはコーラを入れる。また塩とスイカをガツガツ食べる。
で、これからのコースをもう一度見てみる。現在いるのは60k地点。このあと山を2つ超えて70kでもう一つのエイド(CP7)。その後平坦な場所が続いて78k地点(CP8)からまた山に入る。もうこのペースだと、78k地点(CP8)では朝になっているだろうからあと2つ山を超えれば、夜の山道はないことになる。しかもこのあと超えて降りる2つの山はそれぞれ獲得標高は350mづつくらいだ。
ライトが弱くてしんどいのは登りより下り。だから350mの下りを頑張って2つ超えればまた朝になって普通に走れるというわけだ。なんとかいけるな。
疲れが取れると人は前向きになるものである。僕は大分精神的に元気になり、エイドを出て山に向かった。CP6 からの登りは非常に快調だった。ライトと地面が近いので、足元が見やすい。登りはもともと得意だ。下りで抜かれたランナーに負けるわけがないのである。
順調に頂上まできて下りに折り返す。下りはやっぱりしんどい。フラフラしながら1時間以上かけて下っていく。おそらく1キロ30分くらいかかっていたと思う。
下りきったらまた登り。しかしここの登りは割と整備されていて、登りやすい。このあたりですいすいと50kランナーに抜かれていった。ライトが壊れたあたりの湖の湖畔が見えてくる。このコース、ここでわかったのだが、1つの山を登って下り、また裏から登ってほぼ同じところに戻ってくるコースなのだ。自分の中ではすごい距離を旅している気分なのだけど、実際には全然進んでおらず「これ何やってんだよ」みたいな気分になる。
また、しこしこ登る。下りで抜かれたランナーはかなり追い越すものの、50kランナーは追い越せない。快調に感じでも実はスピードはそうでもないようだ。
そして下り。下りはやっぱり遅くなる。一歩一歩だ。足の裏がなんだかおかしくなる。豆ができている。というか皮が破けているかも。ヒロヒリと傷んで足が踏み込めなくなってきた。ここの下りは登山道のようで後半はコンクリート舗装のある道になっていた。「ライトがないので着いて行っていいですか?」と言って降りていく。かなり楽だ。足は痛いけど。その人も追い越してしまい、遊歩道のような道に来た。女性にまた声を掛ける。「一緒に次のエイドまでいっていい?」
女性は「私はもう次のエイドでDNF(リタイア)するから先に行って」という。見ると結構きつそうだ。じゃあ一緒に行こうと一緒に歩く。女性はだんだんフラフラしてくる。脱水症状だろうか。僕の水を飲ませる。少し休ませる。
彼女は「もう行ってくれ」としきりに言うが、僕ももうタイムは目指していなかったし、さすがに不安だったので、エイドまで着いていくことにする。抜かしていったランナーに助けを求めるようにお願いして、少しづつ歩く。かなりきつそうだ。
エイドの300m手前、やっとスタッフが来てくれて、僕は彼女に別れを告げて、エイドに着いた。しんどいパートだった。
着いたエイドは学校だった。スタートで一緒に写真を撮った山本さんに会う。いつの間にか抜かされていたようだった。ライトのことを聞いて、僕にライトを一つ貸してくれた。ありがたい。時間はすでに5時30分だったけれどまだ薄暗い。
ここまで4時間くらいかかっていたことになる。
クタクタになって30分寝ようと横になる。タイマーをかえるといいよ!寝すぎに注意!と山本さんに言われてタイマーをかける。
でも、寒くてまた20分で起きてしまった。靴を脱ぐと足はボッコリ水ぶくれができていた。でも、次は平らなパート10kmだ。とにかく行こう。
ここのパートは田園の田舎町の10k走るところだった。走り始めたのは6時だけどまだまだ暗い。朝の空気を感じながら歩く。足がヒリヒリと痛み、股ズレもある。とにかく足全体が痛い。もう下りでボロボロにやられてしまったようだ。
あとから聞いた話だが、100k以上のウルトラトレイルでは、クッション性のあるシューズが向いているそうだ。僕が履いていたのはinov8のかなりソールの薄いシューズ。ライトもシューズも道具の時点で準備が十分ではなかったのである。
そんなことを今更言っても仕方ない。マラソンコースのような平坦な道をのこのこ歩く。途中歩いている50kランナーにも大分抜かれる。もうしょうがない。
このあたりから僕の目標は完全に感想だけに絞られていた。田園風景の中に登る朝日が輝いていてとにかく綺麗だ。これから登る山が「待っているぞ」とばかりに朝日に照らされていた。
僕を抜くランナーは僕の珍奇な歩き方を見て、声をかけてくれる。「痛いか?大丈夫か?」その度「Never give up!」と答えていた。
僕はレースのスタート前、Facebookに自分のウルトラトレイル参加について投稿していた。そこにはたくさんの方からコメントがついていて、「絶対あきらめるな!絶対できる!」と激励メッセージをもらっていた。僕を支えていたのはもう、「絶対諦めない」という気持ちだけだった。もうこの時点で、フィジカル面ではボロボロだった。
8kを歩いてようやくCP8 。やっとエイドだ。時間はちょうど2時間かかっており、8時過ぎだった。速報のサイトを見ると一緒に写真を撮った北村さんがゴールしており、入間川さんが次のエイドに入っていた。みんなすごい。僕も負けない。絶対にゴールしてやるぞという気持ちが燃えてくる。なんせ、あと20kmなのだ。たった20kmされど20km。1キロ30分かかる僕にとってはあと10時間!?気が遠くなりそうだ。
なんて考えていると眠気がまた襲ってきたので、寝る。30分。今度は虫に刺されまくって目が覚める。おきたら、「おい!行く時間だ!がんばるぞ!」と隣にいたランナーに声をかけられる。
うし行くか。エイドでコーラを満タンにする。パンを食べる。不思議とお腹は空いていない。
ここからは、ペナンエコ一番の登りパート。次のエイドはこの山一つを超えた先だ。
足を丁寧に洗い、スタートした。足を洗うと大分足を踏み込めることがわかった。靴の中に砂がかなりはいっていたのも痛みの原因だったようだ。ソックスはトレラン用ではなくランニングソックスだったので、多分うすすぎたのだろう。ここでも道具の準備不足が露呈した。
(4)に続く、、、